ワールドカップ2019を決定づける可能性のある、運命のホーム最終戦・カザフスタン代表。カザフスタン代表はターンオーバーが多いものの、アレクサンドル・ジグリンを中心に高さとフィジカルの強さを誇り、強国・フィリピン代表を破り勢いのあるチーム。八村塁・渡邊雄太がおらず、富樫勇樹も前戦で足を負傷。崖っぷち日本代表が希望を繋いだ熱戦をピックアップ!
目次
【3ポイントが決まるカザフスタン代表・第1クォーター】
第1クォーターの日本代表は出だし、2本連続、ニックファジーカスで確実に得点を狙っていくが、リングに嫌われ、前戦から続くシュートの不調を引きづっているのかと不安が広がる。その間にカザフスタン代表に6点のランを許す。
流れを変えたのは、ホーム・イラン戦で覚醒した日本ビッグマン・竹内譲次。果敢なドライブからレイアップを沈め、日本代表の先制点をあげる。その後、比江島慎の技ありワンマン速攻で連続得点。そして、再度、竹内譲次のドライブ。日本代表が落ち着きを取り戻すと、ニックファジーカスの調子も戻る。第1クォーターだけで10得点。その中でも、ニックファジーカスへの篠山竜青のパスは「本職ポイントガードはオレだ」と言わんばかりの絶妙アシスト。しかし、カザフスタン代表はルスタム・イェルガリ、マクシム・マルチュクをはじめ、フリーでスリーポイントシュートを打ち、高確率で決め、第1クォーターだけで5本成功。日本代表のファウルトラブルもあり、19-25と6点ビハインドで第1クォーター終了。
【足を使ったドライブ構成日本代表・第2クォーター】
第2クォーターは、ニックファジーカスを下げ、富樫勇樹、馬場雄大、比江島慎、竹内譲次、張本天傑の足を使う「高速ドライブ構成」でスタート。まずは、竹内譲次がドライブで得点。続いて、比江島慎がドライブ、ファウルを受けながらシュート成功、バスケットカウントワンスロー。フリースローも沈め、残り6分、25-25と同点。ここからお互いにディフェンスに熱が入り、得点が膠着。我慢強くディフェンスを続ける日本代表は残り2分、ニックファジーカスのリバウンドからのゴール下が決まり、31-29とついに逆転。そして、バスケIQの高さを見せる田中大貴が相手のファウルを誘い、カザフスタン代表をファイブファウルに追い込み、フリースローをゲット。太田敦也の集中したディフェンスもあり、35-34とリードして前半終了。
【流れを変える馬場ダンク一閃・第3クォーター】
第3クォーター、セーフティリードが欲しい日本代表。日本代表のエース比江島慎が勝負どころを見逃さない。ドライブからの連続得点で残り7分、42-35と、日本代表にペースを作る。離されたくないカザフスタン代表はエースのアレクサンドル・ジグリンにボールを集める。アレクサンドル・ジグリンに対抗する日本代表はファウルがかさみ、残り5分でファイブファウルに達してしまう。好調ニックファジーカスが得点を重ね、個人得点30を記録するも、日本ファウルからのフリースローで食い下がるカザフスタン代表。残り1分半、カザフスタン代表の誘いに乗ってしまい張本天傑がファウル、フリースロー2本を決められ、55-55とついに同点に追いつかれてしまう。気落ちする選手、ベンチ、会場。しかし、ここで日本代表の若きエナジー、馬場雄大のダンクが炸裂する。一気に沸き上がる会場、一変する空気。同点のフリースローを与えてしまった張本天傑もスリーポイントを決め、負けん気を見せる。勢いそのままにリードを広げ、62-58でファイナルクォーターへ。
【ファウルトラブルが日本代表を襲う・第4クォーター】
第4クォーター、逃げ切りたい日本代表は田中大貴の美しいと弧を描くジャンプショットで先制。64-58と突き放す。さらに、ディフェンスはゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスを使い分け、最後まで強度を落とさない。残り6分、難しい体制からのシュート・タフショットを強いられるもニックファジーカスがシュートを沈め、73-62と2桁得点差。たたみかけたい日本代表だが、日本代表の苦難は続く。まずは、ファウルがかさんだ張本天傑の代わりに出場した竹内譲次が4つ目のファウルを犯し、納得できないと両手を上げるジェスチャーをすると、厳しすぎる判定と思われるがテクニカルファウルをとられ、ファイブファウルで退場。代わってコートに戻った張本天傑がすぐさまディフェンスファウルをとられ4つ目。第3クォーターに続きファウルトラブルが起きる。残り3分、なりふり構わなくなったカザフスタン代表ルスタム・イェルガリは、スリーポイントシュートのフェイクにかかりジャンプしてしまったニックファジーカスにワザとぶつかり、3本のフリースローを得る。しかし、このプレイは逆に日本代表に火をつける。ゾーンディフェンスに切り替えたカザフスタン代表をあざ笑うように馬場雄大のジャンプショット、比江島慎のスリーポイントとアウトサイドシュートが連続で決まり、この外からのシュート2本につられ、わずかに広がったゾーンを見逃さず、比江島慎からの絶妙パスがインサイドのニックファジーカスに通り連続得点。カザフスタン代表のゾーンディフェンスを完全攻略し、ニックファジーカスに満面の笑みがこぼれる。残り1分、カザフスタン代表はペイントエリアでワザと転倒するもノーファウル。カザフスタン代表に打つ手なし。逆に馬場雄大がファウルをもらいフリースローを決め、86-70。最後まで攻め続けた日本代表が16点差で6連勝を決めた。
【スタッツから見るカザフスタン代表戦】
ニックファジーカスが1人で41得点。
スリーポイントは成功率18%で2本、6点のみ。
スティール12本。
ターンオーバー、カザフスタン代表24に対し、日本代表8。
ファウル数22。
辻直人が招集されなかったことからもわかる通り、現在の日本代表はドライブとニック・ファジーカスのインサイドが得点源。ターンオーバーが少ないことからミスが少なく、集中したバスケができていたと思われ、逆に積極的に手を伸ばし、パスカット、ドリブルカットを行い、カザフスタン代表のターンオーバーを多く発生させている。しかし、ファウル数22は多すぎる。主なファウルは相手エース、ジグリンを抑えるためのものだが、結果、ジグリンには23点を取られている。攻撃バリエーションに3ポイントシュートを増やすこと、そして、徹底したハードディフェンスが持ち味だけにファウル数を抑えることは難しいが、前回の本職ポイントガード不在や、今回のビッグマン不在という危機に陥らないようにファウル数の管理が今後の課題となった。
【バスケ男子日本代表、ワールドカップ出場決定!?その理由は】
今回の勝利でグループ3位に浮上した日本代表は、ほぼワールドカップ出場が決定したと言える。
なぜなら、アウェイで強豪イラン戦を万が一落としたとしても、続く、アウェイ・格下カタール戦に勝利を納めれば、ワールドカップ出場の3位を争うフィリピン代表は主力が戻ってくるため、残りの2戦のカザフスタン戦、カタール戦は勝利を収め、やはり、フィリピン代表も通算7勝5敗で2次予選を終える。そこで注目されるのは、「得失点差」だ。現時点で、日本代表はプラス88点、フィリピン代表はマイナス21点。その差99点。残り試合2試合で逆転できる点差ではない。そこで筆者のまとめは以下の3点。
・日本代表のワールドカップ2019出場はほぼ決定している。
・アウェイ強豪イラン戦で日本代表が勝利すれば確定。
・フィリピン代表が残り2試合のどちらかを落としても確定。
【進撃の日本人を応援しよう】
女子日本代表とは違い、ワールドカップには3大会ぶりの出場と世界大会から遠ざかっていた男子日本代表。ワールドカップ意地予選の4連敗、アジア競技大会での敗退などのイメージが強く、今を持って、男子日本代表が強くなっているか疑問を持っている人は多いだろう。しかし、確実に日本代表は強くなっている。世界の強国相手に対する日本バスケの挑戦「進撃の日本人」にこれからも注目しよう。